Birocratic — サンプルを刻み、生ベースで跳ねさせる。ブルックリン発「有機的な電子音楽」の作り方
Birocratic 登録者 約3.27万人(2026年7月時点)
70年代ファンクを刻むサンプル感と、生ベース/シンセの演奏を融合するBirocratic。初期Beetsから2026年の制作映像まで、本人主導の現役チャンネルを紹介。
Birocratic — サンプルを刻み、生ベースで跳ねさせる。ブルックリン発「有機的な電子音楽」の作り方
2026年7月、Birocraticはフランスのバンド Ncy Milky の一節を切り取り、揺れる鍵盤と太いドラムへ組み替える短い動画を投稿しました。画面の中心にいるのは、Brooklynのプロデューサー Brandon Rowan。サンプルをループさせて終わるのではなく、自分で弾くベースとシンセを絡め、古い録音に新しい身体を与えます。
初期SoundCloudのLo-Fiが持っていた、少し歪んだサンプルと短いビート。その親密さを残したまま、ファンク、ジャズ、ライブ演奏、正規ライセンスへ広げてきたのが Birocratic です。
チャンネル概要
- 登録者数: 約3.27万人
- 総再生回数: 1,103万回以上
- 動画本数: 101本
- チャンネル開設: 2013年6月
- 最新投稿: 2026年7月21日
- 投稿内容: オリジナル曲、フルアルバム、制作映像、ライブ演奏
- 拠点: アメリカ・ニューヨーク市ブルックリン
毎週のチュートリアル番組ではありません。長く聴かれる楽曲のアーカイブを土台に、現在はサンプリングの短編、共同制作のメイキング、バンド演奏も加わっています。2026年だけでも「Cooking with Biro」、Bastard Jazz Recordsからの新曲、Tracklibを使ったビート、Chillhop Musicからの「cab suave」と、本人の制作が継続中です。
Birocraticとは
Birocraticこと Brandon Rowan は1993年、ニュージャージー州生まれ。4歳でピアノを始め、中学生の頃にギター、ベース、ドラムへ広げました。14歳から働いたアイスクリーム店の給料で Korg のデジタル・レコーディング・コンソールを購入。高校の終わりにコンピューターでビート制作を始めます。
初期の影響は People Under the Stairs、A Tribe Called Quest、DJ Shadow。その後、Flying Lotus、Shigeto、Bonoboが混ぜるエレクトロニック、ジャズ、ヒップホップへ惹かれました。NYUの Clive Davis Institute of Recorded Music を2015年に卒業し、現在はブルックリンのホームスタジオを拠点に、プロデューサー、ベーシスト、ミックス/マスタリングエンジニアとして活動しています。
本人の言葉を借りれば、作るのは 「organic soulを持つelectronic tunes」。ラップトップだけでも、生演奏だけでもない。その中間にBirocraticのグルーヴがあります。
初期作品を育てたSoundCloudとBandcampに加え、現在はSpliceで176素材の「Birocratic’s Ingredients」サンプルパックも公開。作った音を作品として聴かせるだけでなく、次の制作者へ素材として手渡しています。
こんな人におすすめ
- tomppabeats、Jinsang、初期SoundCloudの短いサンプルビートが好きな人
- 70年代ファンクや古いジャズを、現代のLo-Fiへ変える工程に興味がある人
- サンプルへ生ベースやシンセを重ねたいビートメイカー
- Chillhop Musicの初期サウンドや、レーベルの裏側を知りたい人
- 自作曲を動画へライセンスする仕組みに興味があるクリエイター
言語・字幕について
映像中心で言語不問です。チャンネルの中心はインストゥルメンタル曲とフルアルバム。2026年の制作ショートも、サンプルがどう変わるかを音とDAW画面で追えます。
「Cooking with Biro」のようなメイキングでは短い英語トークがありますが、作業の手元と演奏が中心。英語が苦手でも、チャンネルの大部分をそのまま楽しめます。
サンプルを「有機的」にする3つの層
1. 古い録音を刻む
Birocraticのオリジナルは、多くの場合サンプルから始まります。中心にあるのは70年代ファンクと、古いニューヨークのヒップホップ。Logic Proの古いサンプラー EXS24 を使い、扱いにくい環境で試行錯誤したことが、チョップの基礎になったと語っています。
整ったループをそのまま置くのではなく、声、鍵盤、ドラムの断片を切り直し、元曲とは違うアクセントを作る。2026年の「cab suave」でも、フランスのバンドサンプルが、軽く跳ねるChillhopへ変わる瞬間を見せています。
2. 生ベースで重心を動かす
サンプルの上に、Brandon自身のエレクトリックベースとシンセを録音します。ここが、ノイズとピアノで静けさを作るLo-Fiとの大きな違い。低音が前後へ動き、2〜3分のビートに演奏のスリルが生まれます。
セッションベーシストとしてニューヨークのR&B/インディーロックにも参加し、2025年には People Under the Stairs の曲をバンドでカバー。チャンネル上でも「サンプルを作る側」と「サンプルを刻む側」が接続しています。
3. 使われるところまで設計する
初期の人気動画には、YouTube映像で曲を使うための案内が明記されていました。現在の公式サイトにもライセンス申請フォームがあり、利用者はチャンネル規模や収益化の有無を伝え、契約案内を受け取れます。
これは「無条件のフリーBGM」ではなく、作者と映像制作者の関係を整理する仕組みです。Birocraticは Chillhop Music の立ち上げ期にインハウスのマスタリングエンジニアも務め、数百曲のリリースを支えました。曲を作るだけでなく、届け、使われ、権利を守るところまで知るプロデューサーです。
注目の動画
「birocratic - sombre, green」(55.8万再生)
チャンネル最多再生の2分20秒。ジャズの断片、丸いキック、ゆるく沈む低音という初期Birocraticの設計図です。短いのに何度も戻りたくなる、サンプルビートの強さがあります。
「birocratic - ‘misty’」(34.4万再生)
2013年公開のジャジーなLo-Fiビート。Adult Swimのバンプを思わせる簡潔さで、tomppabeats周辺の初期SoundCloud感が好きな人には最も近い入口です。
「Birocratic - Beets 4 [full album]」(17.5万再生)
15曲44分。代表曲「Sleepyface」「Corporate Japan」「Lullaby of the Sea」を含みます。一曲だけでは見えにくい、ファンク、ボサノヴァ、ジャズ、電子音楽の振れ幅が分かります。
「Cooking with Biro Ep. 1」
2026年1月公開。G Mills、K-Magicと「Baloney Syrup」を作る4分のメイキングです。完成曲を置くだけだった初期チャンネルから、共同制作の会話と演奏を見せる現在への変化が表れています。
「sampled a french band for my latest beat “cab suave”」
2026年7月の最新投稿。Ncy Milky「Billy」のサンプルが、Chillhop Musicから出る新曲へ変わる工程を23秒に凝縮。Birocraticがいまもサンプルを探し、切り、作品へ仕上げていることを確認できます。
L.Dreとは何が違うのか
L.Dre が、人気曲のLo-Fiリミックス、初心者向けチュートリアル、ストリーミング収益まで言葉で開く「先生」だとすれば、Birocraticはまず完成したビートを聴かせる「演奏家」です。
制作の説明は短く、サンプルと生ベースが変化する瞬間を見せる。バイラルなアニメ/ポップスのフリップより、70年代ファンクとアンダーグラウンドヒップホップの連続性に軸足を置く。この違いが、同じLo-Fi制作カテゴリでも別の入口を作ります。
チャンネルの歩き方
まず「sombre, green」と「misty」を続けて聴き、初期の2〜3分ビートに慣れる。次に『Beets 4』を通し、Birocraticのファンク感とアルバム構成を味わってください。
作る側なら「Cooking with Biro」と2026年のサンプリングショートへ。古い曲のアーカイブと最新の制作映像を往復すると、10年以上変わらない核と、ライブ演奏へ広がった部分が見えます。
関連チャンネル
- Chillhop Music — Birocraticが立ち上げ期から支え、2026年も作品を発表するレーベル。個人の制作をシーンへ束ねる側から見たい人に
- Cookin Soul — サンプルとヴィンテージ機材でLo-Fi×Boom Bapを鳴らす。Birocraticよりラップ文化とMPCの色が濃い
- Tracklib — Birocraticも2026年の制作で使う、正規にクリアできるサンプリング基盤
- Verysickbeats — サンプルの探し方とチョップを体系的に学ぶならこちら
- Sarah, The Illstrumentalist — 生演奏の揺れをSP-404やMPCへ持ち込む、ハードウェア中心のビートメイカー
まとめ
Birocraticは、初期Lo-Fiの親密なサンプル感を保存しながら、そこに生ベース、シンセ、バンド、ライセンスの知識を足してきました。55万回聴かれた2014年のビートと、2026年7月のサンプリング映像が同じチャンネルに並ぶこと自体が、その継続性を証明しています。
レトロな質感を真似るのではなく、古い音を自分の演奏で現在へ連れてくる。tomppabeatsに近い温度を求めつつ、もう少しファンクと制作の手触りが欲しい人に薦めたいチャンネルです。