音楽理論・解説 英語 / 英語リスニング必要

Adam Neely — 「音楽のVsauce」が問いかける、理論の先にある音楽の本質

Adam Neely 登録者 約182万人(2026年3月時点)

NYCのベーシスト/作曲家が、音楽理論・認知科学・文化批評を縦横無尽に語る。182万人が夢中になる「考える音楽チャンネル」の魅力を徹底解説。

Adam Neely — 「音楽のVsauce」が問いかける、理論の先にある音楽の本質

「Laufeyってジャズなの?」「音楽に速度の限界はあるの?」「チェチェンがテンポを規制した理由とは?」——タイトルを見ただけで頭の中に「?」が浮かび、気づけば30分の動画を最後まで見てしまっている。それがAdam Neelyの引力だ。

NYCを拠点に活動するベーシスト/作曲家が運営するこのチャンネルは、音楽理論を入口にしながら、認知科学、民族音楽学、著作権、文化批評まで縦横無尽に切り込む。182万人の登録者を持つ、英語圏の音楽系YouTubeを代表する存在だ。

チャンネル概要

  • 登録者数: 約182万人
  • 総再生回数: 2.57億回以上
  • 動画本数: 526本以上
  • 活動開始: 2006年(当初はベースレッスン、後に音楽理論エッセイへ転換)
  • 投稿頻度: 不定期(月1〜2本のペース。以前は週1投稿だった)
  • 拠点: ニューヨーク・ブルックリン

もともとはベースの演奏レッスンを投稿していたが、2010年代後半から音楽理論の映像エッセイに軸足を移し、一気にブレイク。Vox の人気シリーズ「Earworm」との共同制作でエミー賞を受賞するなど、教育コンテンツとしての評価も高い。

こんな人におすすめ

  • 音楽理論を「なぜそうなるのか」から理解したい人
  • ジャズに興味はあるけど、アカデミックすぎる解説にはついていけない人
  • ビートメイキングやDAW操作だけでなく、「音楽とは何か」を考えたい人
  • 変拍子やマイクロトーナル(微分音)に心が躍る人
  • 英語のリスニング力を鍛えたい音楽好き(テンポよく喋るが、画面上の図解が助けてくれる)

言語・字幕について

メインは英語で、かなりのトーク量。話すスピードも速い。ただし、楽譜のアニメーション、図解、ベースでの実演が多用されるため、英語が完璧に聞き取れなくても「何について話しているか」は映像で追える場面が多い。自動生成の英語字幕も概ね正確。音楽用語は万国共通なので、理論の基礎知識があれば意外とついていける。

チャンネルの雰囲気

「音楽のVsauce」と呼ばれるだけあって、一見すると突飛な疑問から入って、気づけば深い理論的洞察にたどり着くスタイル。編集のテンポが良く、ミーム的なユーモアを挟みつつも、Berklee(学士)とManhattan School of Music(修士)で学んだジャズ理論の知識に裏打ちされた骨太な内容が展開される。

特筆すべきは、理論を「正解」として教えるのではなく「問い」として投げかける姿勢だ。「これはジャズか?」「この理論体系は誰のためのものか?」といった問いを通じて、音楽を取り巻く文化的・社会的な文脈にまで切り込む。単なるハウツーチャンネルとは一線を画す理由がここにある。

ベースを手に取って即興的にフレーズを弾きながら解説するシーンも多く、「この人は本当にプレイヤーなんだ」という説得力がある。

注目の動画

「Is Laufey jazz?」(193万再生)

グラミー賞を受賞したアイスランド出身のシンガー Laufey を題材に、「ジャズとは何か」という根本的な問いに切り込む。Chet Baker との比較、ジャズの歴史的文脈、アフリカン・アメリカンのアイデンティティとジャズの関係まで踏み込んだ44分の力作。

「Chechnya’s Bizarre Ban on Musical Tempo」(124万再生)

チェチェン共和国がテンポ80〜116BPM以外の音楽を禁止したという衝撃のニュースを掘り下げる。音楽と政治の交差点を扱う、彼ならではの切り口。

「Suno, AI Music, and the Bad Future」(90万再生)

AI音楽生成ツール Suno を取り上げ、AIが音楽にもたらす未来を真正面から論じた2026年の最新作。テクノロジーと創造性の関係について深く考えさせられる。

「The Ethics of Fake Guitar」(89万再生)

バーチャル楽器 vs リアル演奏。テクノロジーがミュージシャンの仕事を奪うのか、それとも新しい表現を生むのか。プロデューサーにも刺さるテーマ。

「Did Ed Sheeran ACTUALLY Plagiarize Marvin Gaye?」(81万再生)

有名な著作権訴訟を音楽理論の観点から分析。コード進行やメロディの類似性とは何かを具体的に解説する。

チャンネルの歩き方

初めて見るなら、まず「Is Laufey jazz?」から。音楽理論の知識がなくても楽しめるし、彼の語り口と分析の深さが凝縮されている。

音楽理論をガッツリ学びたいなら、Q&Aシリーズへ。視聴者からの質問に丁寧に答える形式で、変拍子、マイクロトーナル、コード理論などを幅広くカバー。

社会と音楽の関係に興味があるなら、チェチェンのテンポ規制の動画や、著作権問題を扱った動画がおすすめ。音楽を通じて世界を見る視点が広がる。

演奏者として楽しむなら、Sungazer(後述)のライブ映像やベースプレイスルー動画を。変拍子を涼しい顔で弾きこなす姿は必見。

Sungazer — もう一つの顔

Adam Neely はYouTuberである前に、現役のミュージシャンだ。ドラマーの Shawn Crowder と2014年に結成した Sungazer は、ジャズ・フュージョン、EDM、プログレ、8bit音楽を融合させたデュオ。2021年にフルアルバム「Perihelion」をリリースし、2024年にはギタリスト Plini の北米ツアーのサポートを務めた。

Blue Note NYCでのライブ映像も YouTube にアップされており、チャンネルの理論解説がステージ上でどう活きるのかを体感できる。「この人の言うことには実践の裏付けがある」と確信できるはずだ。

関連チャンネル

  • Polyphonic — 音楽史の映像エッセイ。Adam Neely とは「Ghost Notes」ポッドキャストで共演
  • 12tone — 手描きアニメーションで音楽理論を解説。「Musica Analytica」で共演
  • Vox Earworm — Adam Neely がエミー賞を受賞した「Giant Steps」解説動画のパートナー
  • 8-bit Music Theory — ゲーム音楽を理論的に分析。「Musica Analytica」仲間
  • Rick Beato — 「What Makes This Song Great?」シリーズで知られるベテラン。より実践的なアプローチ
  • David Bennett Piano — ピアノで理論を解説。Adam Neely がジャズ寄りなら、こちらはポップス寄り
  • Nahre Sol — クラシックを起点に未知のジャンルを演奏と作曲へ変換するピアニスト。Adamとはループを扱う動画でも共演

まとめ

Adam Neely は「音楽理論を教える人」ではなく、「音楽について考える人」だ。彼の動画を見た後は、音楽の聴こえ方が少しだけ変わる。ビートメイカーもギタリストもリスナーも、「なぜ自分はこの音楽が好きなのか」を言語化するヒントがここにある。英語のハードルはあるが、それを超える価値は十分にある。