Kupla — ピアノ、クラリネット、森の音。フィンランド発Lo-Fiを「聴く音楽」に戻す
Kupla 登録者 約3.78万人(2026年7月時点)
クラシックとジャズを学んだフィンランドの作曲家Kupla。ピアノ、クラリネット、環境音を重ね、Lofi Girl初期の作品群から2026年作まで育てた静かな音世界を紹介。
Kupla — ピアノ、クラリネット、森の音。フィンランド発Lo-Fiを「聴く音楽」に戻す
「作業用BGM」とひと括りにされた瞬間、Lo-Fiから作曲家の顔が消えてしまうことがある。Kuplaを聴くと、その逆が起きます。
雨音の奥からピアノが立ち上がり、クラリネットが人の息を運び、少し遅れて太いドラムが入る。一曲は短くても、そこには北欧の森や子どもの頃の記憶まで見えるような奥行きがある。Kuplaこと Lauri Achté は、フィンランドのLo-Fiを世界へ届けた先駆者であり、「聴き流せる」と「聴き込みたい」を両立させる作曲家です。
チャンネル概要
- 登録者数: 約3.78万人
- 総再生回数: 4,111万回以上
- 動画本数: 24本
- チャンネル開設: 2015年2月
- 最新の本人投稿: 2025年2月
- 拠点: フィンランド・ヘルシンキ
動画本数は多くありません。シングル、フルアルバム、制作風景、スタジオライブを必要なときだけ置く、作品棚のようなチャンネルです。YouTubeの投稿間隔は長い一方、公式ディスコグラフィーでは2024年の『Dragonfly』、2026年の『Space Between Worlds』までリリースが続いており、現在も音楽家として活動しています。
作品はSpotifyだけでなく、自身のBandcampとSoundCloudにも整理されています。短い動画から入って、アルバム購入や過去の音源へ遡りやすい導線です。
Kuplaとは
1988年ヘルシンキ生まれ。7歳だった1995年にピアノを始め、クラシックとジャズを学びました。のちにクラリネットも習得し、2013年から2020年まではロンドンに暮らして Sound Arts の修士課程を修了。2017年から音楽制作を本業にしています。
「Kupla」というプロジェクトが始まったのは2012年。当初は自分のためだけに音楽を作る場所でした。そこからSoundCloudのプロデューサー同士の交流へ入り、Dream Easy CollectiveやCookie Dough Recordsで仲間を増やし、Chillhop Music、Lofi Girlへと活動を広げていきます。
Lofi Girlがまだ ChilledCow と呼ばれていた2019年、Kuplaはレーベル立ち上げ期から声を掛けられました。『Kingdom in Blue』『Life Forms』『Melody Mountain』などを Lofi Records から発表し、2026年作『Space Between Worlds』まで関係が続いています。
こんな人におすすめ
- ピアノ主体のLo-Fiでも、一曲ごとの作曲や演奏をきちんと味わいたい人
- Nujabes、ジャジーヒップホップ、映画音楽の余韻が好きな人
- クラリネットや環境音が生む、アコースティックな質感に惹かれる人
- ビートテープをアルバム単位で聴きたい人
- フィンランドの民族楽器カンテレを使った制作風景を見たい人
言語・字幕について
映像中心で言語不問です。大半はインストゥルメンタル曲やアルバムの通し動画で、英語を理解しなくても問題ありません。制作動画にも長い解説はなく、手元、楽器、録音の重なりを見れば流れを追えます。
概要欄は英語ですが、曲順、使用楽器、参加演奏家が簡潔に整理されています。海外チャンネルへの入口としても非常に見やすい構成です。
音の核は「演奏」と「場所」
Kuplaの音を特徴づけるのは、古いレコードらしいノイズだけではありません。
第一に、ピアノが伴奏ではなく物語を担うこと。クラシックとジャズの素養を持つため、数小節のループにも和音の移ろいと、弾き手の間が残ります。
第二に、クラリネットの呼吸。鍵盤の輪郭を柔らかくほどき、ビートに人間の体温を加えます。2025年のホームスタジオライブでは Kupla 自身がクラリネットとメロディカを担当し、ピアノ、ベース、ドラムとの四人編成で作品を演奏。Austrian Audio OC818を2本、無指向性で使い、部屋ごとの響きを収めました。
第三に、フィールドレコーディング。風、水、鳥、部屋の気配が、単なる効果音ではなく曲の記憶として置かれます。「Beatmaking with Kantele」ではフィンランドの伝統楽器カンテレ、メロディカ、クラリネット、打楽器、シンセを重ね、2時間の制作を2分に圧縮。サンプルパックを選ぶだけでは作れない音の出自が見えます。
注目の動画
「Kupla - The Past, The Present」(67.7万再生)
チャンネル最多再生の代表曲。乾いたドラムと、過去を振り返るようなピアノの反復が少しずつ景色を変えていきます。3分でKuplaのメロディ、質感、余白を掴める入口です。
「Kupla - Mirage [2022 full album]」(26.3万再生)
10曲27分のフルアルバム。ピアノ中心の「Cicadas」から、シンセの低音が走る「In Orbit」まで、Kuplaが単一の“chill”に収まらないことが分かります。
「Kupla beatmaking | Amethyst」(2.77万再生)
実際に「Amethyst」が生まれたセッションを編集した制作動画。Kupla自身が示す順序は、着想、即興、全録音、構成と意味づけ、完成。技巧よりも、アイデアを作品へ育てる姿勢が中心です。
「Beatmaking with Kantele」(7,300再生)
カンテレから始まり、クラリネットや打楽器が一層ずつ加わる2分15秒。北欧という出自が音色そのものへ変わる瞬間を見られます。
「Kupla Home Studio Acoustic LIVE」(6,300再生)
2025年2月公開。less.people、QMTZ、Magic Baconと、自宅スタジオで未発表曲を生演奏しています。Lo-Fiを「PC内のループ」ではなく、演奏家同士のアンサンブルとして捉え直す一本です。
チャンネルの歩き方
最初は「The Past, The Present」を一曲だけ。気に入ったら同曲を含む『Mirage』を通して聴くと、シングルがアルバムの中で担う役割まで見えてきます。
制作側に興味があるなら「Amethyst」から「Beatmaking with Kantele」へ。ピアノの即興を軸にする回と、複数の生楽器を積み上げる回を続けて見ると、Kuplaの方法が立体的に分かります。
最後にホームスタジオライブへ。普段は音源の奥に隠れている演奏家の呼吸が見え、作品をもう一度聴き直したくなるはずです。
関連チャンネル
- Chillhop Music — Kuplaも参加してきたLo-Fiレーベル。個人の作曲から、季節コンピと24時間ラジオのキュレーションへ視点を広げる
- L.Dre — Lo-Fiをリミックス、チュートリアル、音楽ビジネスまで開くLAのプロデューサー。Kuplaは作曲と生演奏により深く寄る
- Sarah, The Illstrumentalist — SP-404とMPCで手打ちの揺れを作る。Kuplaの鍵盤中心のワークフローと比較したい
- Hainbach — 環境音や録音機材を「場所の記憶」へ変える実験音楽家
- Cookin Soul — Lo-FiとBoom Bapの接点をヴィンテージサンプラーで鳴らす、よりヒップホップ寄りの選択肢
まとめ
Kuplaのチャンネルは、投稿量で押す場所ではありません。24本の動画に、ピアノの学習、クラリネットの息、ロンドンでの音響研究、ヘルシンキの自然、プロデューサー仲間とのつながりが凝縮されています。
「勉強中に流せる」だけで終わらせず、一曲の向こうにいる演奏家まで見せてくれる。Lo-Fiを背景音から、もう一度“聴く音楽”へ戻してくれるチャンネルです。