Hainbach — 旧ソ連の計測器、核研究所の廃棄機材、テープループ。「壊れかけ」から音楽を生む実験家
Hainbach 登録者 約22.1万人(2026年4月時点)
ベルリン在住の電子音楽家が、旧ソ連の計測器や核研究所の廃棄機材で音楽を作る。AudioThingとのプラグインコラボ、Uncompressedスーパーグループ、そしてドイツ映画賞ノミネート。
Hainbach — 旧ソ連の計測器、核研究所の廃棄機材、テープループ。「壊れかけ」から音楽を生む実験家
核研究所から廃棄されたロックイン・アンプリファイア。旧ソ連の軍用ワイヤーレコーダー。粒子加速器に使われていた計測モジュール。普通の人がゴミだと思うものを、この人は楽器にしてしまう。
Stefan Paul Goetsch、通称 Hainbach。ベルリンを拠点にする電子音楽家であり、「テスト機材で音楽を作る」という世界的にもほぼ前例のないジャンルを YouTube 上で確立した人物です。
チャンネル概要
- 登録者数: 約22.1万人
- 総再生回数: 2,553万回以上
- 動画本数: 814本
- 活動開始: 2011年(当初は即興練習の記録用)
- 投稿頻度: 週2〜3本(ロングフォーム+Shorts混在)
- 拠点: ドイツ・ベルリン
1978年フライブルク生まれ。6歳でピアノを始め、10代でプログラミングとバンド活動を並行。2010年から Hainbach 名義で活動を開始し、ドイツ国内の主要劇場(ハノーファー州立劇場、ハンブルク劇場など)で70作以上の舞台音楽を手がけてきた作曲家でもあります。
こんな人におすすめ
- 普通のシンセやDAWに飽きて、何か根本的に違うアプローチを探している人
- テープループやアナログ機材に興味があるけど、どこから始めればいいか分からない人
- 音の「質感」や「不完全さ」にこそ美しさを感じる人
- 旧ソ連・東欧の電子楽器やシンセの歴史に興味がある人
- アンビエント、ドローン、実験音楽が好きだけど、堅苦しいアカデミックな空気は苦手な人
言語・字幕について
英語での語りがありますが、Hainbach のコンテンツは映像と音が主役。機材を触って音を出す——その過程が画面の中心なので、英語が得意でなくても十分楽しめます。テクニカルな解説動画(テープループの手法など)では英語の理解があると学びが深まりますが、多くの動画は「見て・聴いて」で完結します。
チャンネルの雰囲気
Hainbach のスタジオは、まるでベルリンの蚤の市がそのまま音楽スタジオになったような空間。壁にはオシロスコープやファンクションジェネレーター、棚にはソ連製のドラムマシンや謎のアナログ機器が並ぶ。
映像は落ち着いたトーンで、手元のクローズアップが多い。派手な編集やテロップはほとんどなく、機材に電源を入れ、ツマミを回し、音が生まれる——その一連の流れをじっくり見せるスタイルです。
語り口は穏やかで知的。自分を「楽器と格闘するのが好きだ」と語り、ノイズやドリフト、偶然性こそが音楽の本質だという哲学が全編に通底しています。Engadget が彼のアプローチを「シンセシスのダークソウル」と表現したのは言い得て妙。簡単に美しい音は出ない。でも、その過程にこそ魅力がある。
注目のコンテンツ
ソ連・東欧シンセシリーズ
最多再生の「This Soviet synth is A E S T H E T I C」(79万再生)を筆頭に、旧ソ連や東欧の知られざるシンセを紹介する動画群。ソ連製ドラムマシン RMIF ES-2-5、Juno-106 のソ連版 RMIF TI-5、日本の超希少シンセ Suiko ST-50 など、他では絶対に見られない機材が次々と登場します。
テープループ・テクニック
「Sound-on-Sound Tape Looping」「Multi-Track Tape Looping」など、テープを使ったループ制作の実践的なチュートリアル群。デジタルとアナログを組み合わせるワークフローの解説動画もあり、テープループ入門としても秀逸。
Landfill Totems プロジェクト
核研究所や粒子加速器から回収した廃棄機材で巨大な彫刻を制作し、ベルリンのギャラリーに設置。そこから生まれた音源をアルバム化し、さらに Spitfire Audio からサンプルライブラリとしてリリースするという、アート × 音楽 × テクノロジーの横断プロジェクト。
AudioThing コラボレーション
ソ連の軍用ワイヤーレコーダーを再現した「Wires」、BBC Radiophonic Workshop の回転モーターを再現した「Motors」、マイクロサウンドをリズムに変換する「B00GA」など、9本以上のプラグインを AudioThing と共同開発。「Hainpack」としてバンドル販売されており、彼の世界観をDAW上で体験できます。
チャンネルの歩き方
まず1本: 「This Soviet synth is A E S T H E T I C」(79万再生)で Hainbach の世界観に触れる。旧ソ連の美しいデザインのシンセから出てくる予想外の音に驚くはず。
テープに興味があるなら: 「How To Do Sound-On-Sound Tape Looping」→「Multi-Track Tape Looping」→「Do you need an analog tape machine in your studio?」の順で、基礎から実践まで学べる。
ディープに潜りたいなら: 「The Surprising Comeback of a 1930s Experimental Synth」(Trautonium 特集)、Kraftwerk のフローリアン・シュナイダーのオークションで入手した $10,000 の教育用シンセの動画など、音楽史と実験が交差するコンテンツへ。
最新の注目: 2026年4月にはドイツ映画賞(Deutscher Filmpreis)にノミネート。劇場音楽家としてのキャリアが映画界でも評価され始めています。
関連チャンネル
- Look Mum No Computer — DIYシンセビルダー。Hainbach と共に「Uncompressed」スーパーグループのメンバー
- Moritz Klein — Hainbachが規格外の計測器から音を探すのに対し、部品とブレッドボードからシンセ回路を一段ずつ理解する入口
- True Cuckoo — シンセ・パフォーマンス。「Uncompressed」の3人目。OP-1 / OP-Z の第一人者
- Red Means Recording — モジュラーシンセとシンセウェイブ。映像美学の方向性は異なるが「ハードウェアで音楽を作る喜び」という哲学を共有
- Loopop — シンセ・レビューの徹底解説者。Hainbach が紹介する機材の技術的な背景を知りたい時に
- BoBeats — スウェーデンのシンセ・レビュアー。Hainbach がニッチな実験機材なら、BoBeats はメインストリーム寄りのシンセを楽しくカバー
- Ah! Kosmos — ベルリンの電子音楽家。Hainbach とのコラボ作「Ruin」を2026年にリリース
- mylar melodies — モジュラーシンセのドキュメンタリー的なチャンネル。“Why We Bleep” ポッドキャスト
まとめ
「楽器と格闘するのが好きだ」——Hainbach のこの一言が、このチャンネルのすべてを物語っている。核研究所の廃棄物から音楽を紡ぎ、ソ連の軍用機器をプラグインとして蘇らせ、70以上の舞台作品と映画音楽を手がけてきた。ノイズや不完全さの中にこそ美しさがあると信じる人に、これ以上ないチャンネルです。