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「モジュラーを曲にする」── mylar melodies、偶然のパッチをライブ演奏へ変えるシンセ伝道師

mylarmelodies 登録者 約8.66万人(2026年7月時点)

英国の電子音楽家 Alex Theakston が、Eurorackを「演奏できる楽器」に変える。ライブ・テクノの設計、深いデモ、Why We Bleep、そしてBefacoとのRANDOM8。

「モジュラーを曲にする」── mylar melodies、偶然のパッチをライブ演奏へ変えるシンセ伝道師

ケーブルをつないで面白い音が出た。その次に、どうやって展開を作り、観客の前で一曲として演奏するのか。モジュラーシンセで本当に難しいのは、そこからです。

英国の電子音楽家 Alex Theakston、通称 mylar melodies は、その「次」を徹底的に考える人。ランダム電圧やロジック、ミュート、ルーパーまでを組み合わせ、予測不能な箱の集合を、何十分でも演奏できる一つの楽器へ変えていきます。

チャンネル概要

  • 登録者数: 約8.66万人(2026年7月時点)
  • 総再生回数: 約1,298万回
  • 動画本数: 351本
  • チャンネル開設: 2006年
  • 拠点: 英国
  • 主な内容: モジュラーシンセのチュートリアル、機材デモ、ライブ・システム設計、インタビュー

mylar melodies は、ミュージシャン、映像制作者、ポッドキャスト・ホストという複数の顔を持つクリエイターです。18歳のとき、祖父母が車のために貯めてくれていた資金を Cwejman S1 セミモジュラーシンセに注ぎ込んだという筋金入り。それから20年以上、シンセと音楽制作を掘り続けてきました。

チャンネルを貫くのは、「機材を所有する」より「機材で音楽を前へ進める」という視点。モジュール単体のデモでも、スペック表を読み上げるだけでは終わりません。その機能がリズムや展開、即興演奏のどこで役立つかまで、実際のパッチで示してくれます。

動画制作は Patreon のコミュニティに支えられ、自作音源は Bandcamp で公開。「Why We Bleep」は Apple Podcasts や Spotify でも配信されています。動画、音楽、長編対話が別々ではなく、一つの探究としてつながっています。

こんな人におすすめ

  • Eurorackを始めたいけれど、何を組めば一つの楽器になるのか分からない人
  • モジュラーで「音は出るのに、曲にならない」と悩んでいる人
  • ライブ・テクノや即興演奏向けのシステムを小さく設計したい人
  • ジェネレーティブ音楽を、偶然任せではなく音楽的に制御したい人
  • 機材を作る人の思想や、電子音楽家の制作プロセスまで知りたい人

言語・字幕について

解説は英国英語で、情報量もかなり多めです。パッチの理由やライブでの判断まで言葉で深掘りするため、十分に学ぶなら英語リスニング力が必要。YouTube Data API 上で字幕なしとなる代表動画もあり、「字幕が常に使える」とは考えない方がよいでしょう。

一方、カメラはノブ、ケーブル、信号の流れを丁寧に追い、長い動画にはチャプターも用意されています。機材名や VCA、LFO、CV、gate といった基本用語に慣れていれば、手元映像を手掛かりに理解しやすい構成です。演奏パートはもちろん言語を問わず楽しめます。

チャンネルの雰囲気

mylar melodies の動画は、長めのワークショップと興奮気味の友人の機材トークが一つになったような空気です。話すテンポは速く、ユーモアも多い。それでも、なぜこのモジュールが必要なのか、なぜここでミュートするのかという説明は具体的で、熱量だけに流れません。

特に面白いのは、完成したパッチだけでなく「システムの設計思想」を見せること。音源を何台入れるかより、どう展開を作るか。ランダムを増やすより、どこで固定し、どこで変化させるか。モジュラーを巨大なプリセット集ではなく、身体で扱う演奏装置として考えています。

コンテンツの3つの柱

1. 演奏できるモジュラーの設計

「Suggested Systems」やライブ・システム解説では、限られたHPの中に音源、ドラム、シーケンサー、ミキサー、エフェクトをどう収めるかを段階的に説明します。

代表的な「How to make a TINY live techno modular synth in only 62HP.」は、わずか62HPのケースを小型ライブ・テクノ・マシンとして組み上げる73分の実践編。完成形だけでなく、配線、展開を作る仕組み、制約の中で起きる問題まで追えるため、ラック構成を考える人には一本の講座として機能します。

2. 偶然を音楽に変えるパッチング

VCA、LFO、ランダム電圧、クオンタイザー、クロック・ディバイダー、ロジック、シーケンシャル・スイッチ。mylar melodies は、こうした地味に見える機能を組み合わせて、反復の中に長い変化を作るのが得意です。

「An Intro to Making Generative Music on Modular」では、ランダムを入れれば自動的に良い音楽になるわけではないことを前提に、変化の速度や音程の範囲をどう整えるかを解説。「Why you can never have too many VCAs」、Intellijel Metropolis のデモ、Music Thing Modular Turing Machine の長編も、モジュラーの基礎部品が作曲にどう効くかを理解する入口になります。

3. 機材の向こう側にいる人を聞く

月刊ポッドキャスト「Why We Bleep」では、電子音楽家と、彼らの道具を作る開発者に長時間インタビュー。Surgeon、James Blake、Mutable Instruments の Olivier Gillet、Make Noise、Music Thing Modular など、演奏家とメーカーを同じ地平で扱います。

ここで中心になるのは新製品の宣伝ではなく、何に失敗し、どう作り方を見つけたのかという人間の話。YouTubeの機材デモとポッドキャストを行き来すると、一枚のパネルの背後にある設計思想まで見えてきます。

2026年の到達点 ── Befaco RANDOM8

2026年、mylar melodies は Befaco と共同で Eurorack モジュール「RANDOM8」を発表しました。8HPに8系統のランダム電圧を収め、各チャンネルでループ、変化、確率、スライド、音程のクオンタイズを扱えるモジュールです。

重要なのは、単にランダム値をたくさん出すことではありません。演奏中にボタンで偶然を捕まえ、しばらく固定し、必要なときだけ少しずつ変える。長年の動画で語ってきた「制御できる偶然」と「ライブで触れること」が、実際の製品になりました。2026年7月もライブ・リグを簡素化する動画を公開しており、チャンネルの探究は今も進行中です。

注目の動画

  • Make Noise 0-COAST Semi-Modular Synth Demo(約81.6万回再生)— チャンネル最多再生。複雑な概念を音の変化として理解させるデモ力が分かる
  • An Intro to Making Generative Music on Modular(約34.5万回再生)— ジェネレーティブ・パッチの基本要素を一つずつ組み上げる入門編
  • How to make a TINY live techno modular synth in only 62HP.(約31.4万回再生)— 小さなケースを完全なライブ楽器にする長編ワークショップ
  • HOW TO DESIGN A LIVE MODULAR SYNTH & PLAY FOREVER(約13.3万回再生)— 曲間を止めず、展開を作り続けるためのシステム設計
  • RANDOM8: The world’s most random module? — 自ら構想したモジュールを、Rings、Clouds、ドラム、テクノの順で実演する2026年の集大成

チャンネルの歩き方

初めてモジュラーに触れるなら、「10 Important Questions for Modular Synth Beginners.」から。ケース、電源、必要な機能、費用まで、買い始める前に知りたい疑問を約1時間で整理できます。

小さなラックを作りたいなら、代表動画の62HPシステムへ。完成した音より先に、役割の重複を避ける考え方を見るのがポイントです。

パッチはできるのに曲にならないなら、「An Intro to Making Generative Music on Modular」から「HOW TO DESIGN A LIVE MODULAR SYNTH & PLAY FOREVER」へ進むと、音の変化と演奏上の展開がつながります。

人と思想に興味が湧いたら、「Why We Bleep」へ。好きなメーカーやアーティストの回から入れば、長尺でも聞きやすいはずです。

関連チャンネル

  • Hainbach — 機材の制約と偶然を作品へ変える実験家。mylar melodies がライブ・システムなら、Hainbach はテープと計測器から別の入口を開く
  • Look Mum No Computer — 回路を自作し、巨大な装置まで作るDIYシンセ・ビルダー。演奏できる装置への執着を共有
  • True Cuckoo — 手描きの図と実演でシンセを解きほぐす教育者。機材を怖くなくする親しみやすさが近い
  • Red Means Recording — モジュラーを映像作品とライブ・パフォーマンスとして見せる。言葉より演奏から入りたいときに
  • Loopop — 同じ機材を仕様と信号経路から深掘りするレビューの百科事典。mylar melodies の音楽的な視点と補完し合う
  • BoBeats — 初心者に寄り添う穏やかな機材レビュー。モジュラーに絞る前のシンセ選びにも向く

まとめ

mylar melodies は、モジュラーシンセを「面白い音が出る箱」から「人前で演奏し続けられる楽器」へ進めるチャンネルです。小さなラックの設計、偶然の制御、長い即興の展開、そして作り手へのインタビュー。そのすべてが、機材を買うことではなく、音楽をもっと上手に作ることへ向いている。パッチケーブルの森で次の一手を見失った人に、これほど頼れる道案内はなかなかありません。