Look Mum No Computer — Furbyオルガン、1000オシレーター、そしてユーロビジョン。DIYシンセの狂気と愛
Look Mum No Computer 登録者 約71.8万人(2026年3月時点)
壊れたおもちゃをシンセに変え、Furbyをオルガンに仕立て、1000個のオシレーターでギネス記録を樹立。2026年にはユーロビジョンUK代表へ。Sam Battleの果てしないDIY音楽の旅。
Look Mum No Computer — Furbyオルガン、1000オシレーター、そしてユーロビジョン。DIYシンセの狂気と愛
Furbyを楽器にした男がいる。Game Boyをシンセに変え、1,000個のオシレーターを壁に並べてギネス世界記録を打ち立て、自転車にシンセを搭載し、そして2026年——ユーロビジョン・ソング・コンテストにイギリス代表として出場する。
Sam Battle、通称 Look Mum No Computer。このチャンネルは「DIYシンセ」という言葉から想像できるすべてを軽々と超えていく。
チャンネル概要
- 登録者数: 約71.8万人
- 総再生回数: 8,972万回以上
- 動画本数: 741本
- 活動開始: 2013年(音楽機材動画は2016年から)
- 投稿頻度: 週数本(Shorts含む)
- 拠点: イギリス・ケント州ラムズゲート
Sam Battle はリンカンシャー州グランサム出身。子供の頃からおもちゃやトースターを分解するのが趣味だった。大学で化学を専攻するも合わず、音楽テクノロジーのコースに移籍、さらにそれも中退してバンド ZIBRA に加入。2015年にグラストンベリーに出演するも、レーベルとの契約問題でバンドは解散。
一文無しの状態から「Look Mum No Computer」として再出発し、壊れた電子機器を楽器に変えるDIYの世界に没頭。その飽くなき創作欲が、71万人を超えるコミュニティを生んだ。
こんな人におすすめ
- 楽器は「買うもの」じゃなく「作るもの」だと思っている人
- ハンダごてを握ると心が落ち着く人
- モジュラーシンセに興味があるけど、Eurorackの価格にひるんでいる人
- 「これ、楽器にならないかな?」と日常的に考えてしまう人
- 音楽とメイカーカルチャーの交差点に立ちたい人
- 純粋に、見ていて元気が出る動画を探している人
言語・字幕について
映像中心で言語不問。これがこのチャンネルの最大の強み。ハンダ付け、配線、回路の組み立て、そして完成品を鳴らす瞬間——すべてが視覚的に伝わる。Sam の英語はイギリス訛りでテンポが速いが、話の内容が分からなくても「何を作っていて、どう鳴るか」は映像だけで十分楽しめる。
チャンネルの雰囲気
一言でいえば、パンク精神で駆動するメイカー・チャンネル。
Sam のエネルギーは画面越しに伝染する。巨大なプロジェクトを前にしても深刻にならず、笑いながら配線し、失敗してもカメラを止めない。「5個のオシレーターで試す → うまくいく → 100個にする → もっとうまくいく → 1,000個にする」というスケールの膨張は、このチャンネルの根幹にある哲学だ。
映像のクオリティは年々上がっているが、どこかガレージ感が残っているのがいい。完璧さよりも「作ること」「鳴らすこと」のワクワクが全面に出ている。
伝説のビルド
Furby Organ(完成まで約7年)
Furbyの中にシンセボイスを仕込み、鍵盤で演奏できるオルガンに改造。「Furby Formant Fusion Synthesis」という独自の音声合成方式を搭載。44個のトーンコントロールダイヤルと、眠ったFurbyを起こすノブまで付いている。YouTube で380万再生を記録した代表作。
1000 Oscillator Megadrone(KiloDrone)
高さ2.3メートル、幅4メートルの壁一面に1,000個のアナログオシレーターを搭載。ノブ2,400個、抵抗8,000個、LED1,000個以上。2020年にギネス世界記録「最大のドローンシンセサイザー」に認定。160万再生のチャンネル最大ヒット動画。
Game Boy Triple Oscillator Synth
LSDJ(Little Sound DJ)のサウンドチップを活用したGame Boy 3連オシレーター。モジュラーシンセのパネルに組み込まれ、チップチューンのサウンドをアナログの世界に橋渡しする。
その他
自転車シンセ(Raleigh Chopperにシンセを搭載)、ライトセーバー・テルミン、火炎放射器オルガン、猫用キーボードなど、リストは果てしない。
Kosmo Format — 彼が発明したDIYモジュラー規格
Sam Battle の功績はビルドだけではない。Kosmo というモジュラーシンセのフォーマットを自ら設計し、オープンソースで公開した。
- パネル高さ20cm(Eurorackより大きく、初心者が扱いやすい)
- 1/4インチジャック採用(3.5mmより頑丈)
- Eurorackと電気的に互換(-12V / GND / +12V)
- 完成品は売っていない。自分で作るしかない
回路図は彼のウェブサイトで無料公開され、コミュニティWikiも充実している。Kosmo は「シンセは買うものではなく作るもの」という彼の哲学そのものだ。
The Museum of Everything Else
2021年、ラムズゲートに The Museum of Everything Else を開館。Furby Organ、KiloDrone、Game Boyシンセといった自作品に加え、寄贈されたヴィンテージ電子機器、Marconiの計測器、古い電話交換機、携帯ゲーム機などを展示。
特筆すべきは**「触ってOK」のポリシー**。ほとんどの展示物に実際に触れて、音を出して遊べる。「obsolete(時代遅れ)」とされたテクノロジーに再び命を吹き込む場所だ。
ユーロビジョン 2026
2026年2月、イギリスのユーロビジョン代表に選出。楽曲「Eins, Zwei, Drei」はシンセポップ・トラックで、2024年優勝者 Nemo の楽曲を共同プロデュースした NYLAN(Lasse Midtsian Nymann)と共作。5月にウィーンで開催されるグランドファイナルに自動出場する。
DIYシンセの世界から、ヨーロッパ最大の音楽コンテストへ。この予測不能な展開こそが Sam Battle らしい。
関連チャンネル
- True Cuckoo — シンセ・パフォーマンス。Sam Battle と Hainbach と共に「Uncompressed」(シンセナード・スーパーグループ)を結成
- Red Means Recording — DAWレス・パフォーマンス。映像美とシンセの融合
- Ricky Tinez — ハードウェアジャム。よりリラックスしたトーン
- BoBeats — シンセレビュー。購入ガイドとして相補的
- Hainbach — 旧ソ連の計測器で音楽制作。「Uncompressed」メンバー
- Moritz Klein — 巨大な発明へ突き進むSamに対し、基本回路を小さく組み、なぜ音が出るかを初心者へ順序立てて教える
- mylar melodies — モジュラーシンセ専門。より音楽性にフォーカス
まとめ
Look Mum No Computer は、「楽器は自分で作れる」「壊れたものは音楽になる」「馬鹿げたアイデアこそ最高の楽器を生む」ということを、741本の動画で証明し続けている。テクニカルな知識がなくても、この人が何かを完成させて音を出した瞬間の喜びは、言語の壁を越えて伝わってくる。ユーロビジョンという新章がどう展開するか、2026年は特に目が離せない。