プロダクション教育 英語 / 英語字幕あり

Underdog Electronic Music School — グルーヴを「見える形」にする電子音楽教室

Underdog Electronic Music School 登録者 約35.2万人(2026年8月時点)

脈拍、シンコペーション、16小節の地図。テクノのグルーヴと構造を図解し、Ableton Liveで試せる判断へ変えるUnderdogの制作教育チャンネル。

四つ打ちのキックを置く。裏拍へハイハットを置く。その間にある16分音符の一つを、少しだけ強く鳴らす。たったそれだけで、まっすぐだったビートに身体を横へ引く力が生まれる。

Underdog Electronic Music Schoolは、この変化を「なんとなくノれる」で終わらせない。強拍、裏拍、弱い16分音符を図にして、どこへ音を置いたから身体が動いたのかを説明する。さらに一小節のグルーヴを16小節のブロックへ、16小節を五分の物語へ広げていく。耳と身体で感じていた電子音楽の構造を、もう一度使える形で見せてくれるチャンネルだ。

チャンネル概要

  • 登録者数: 約35.2万人(2026年8月時点)
  • 総再生回数: 2,114万回以上
  • 動画本数: 418本
  • YouTube開設: 2020年8月
  • 拠点: ベルギー・ブリュッセル
  • 運営者: Oscar Verlinden(Oscar Underdog)
  • 主な内容: リズム、テクノ、アレンジ、サウンドデザイン、ミキシング、Ableton Live

Underdogは、ブリュッセルを拠点とする独立系の電子音楽学校だ。創設者で動画の講師を務めるOscar Verlindenは、自身もTorc名義でテクノを制作する。2019年に始まった対面クラスは、YouTube、オンラインコース、Discordコミュニティへ広がり、現在は実際の教室とオンラインの両方で学べる形になっている。

運営チームは三きょうだい。Oscarがカメラの前で教え、Billyが週次の長尺動画を編集し、Tessaが縦型動画の編集とブリュッセル教室の共同運営を担う。学校がYouTubeを宣伝に使っているというより、無料動画、体系的なコース、対面での学びを一つの教育プロジェクトとしてつないでいる。

2026年も発信は活発だ。ドラムをゼロから組む入門、モジュラーでのライブセット、アナログ・コンプレッサー、教室の音響調整、テクノ集中講座の記録まで扱う。最新長尺では、ミキシングエンジニアを招き「一日でテクノのミックスをどこまで学べるか」に挑戦している。

こんな人におすすめ

  • テクノやハウスを作りたいが、ループの先へ進めない人
  • ドラムを置けても、なぜグルーヴするのか説明できない人
  • Ableton Liveの操作より先に、リズムと構成の原理を理解したい人
  • ブレイクとドロップだけに頼らず、長い展開を作りたい人
  • 音を足し続けてしまい、引き算や余白の判断を学びたい人
  • 音楽理論を鍵盤だけでなく、ダンスフロアの身体感覚から学びたい人
  • 真面目な内容でも、遊びとユーモアのある講師から学びたい人

言語・字幕について

解説は英語で、確認した主要動画には英語の自動字幕がある。Oscarの話し方は明瞭で、重要な言葉を言い換えながら進むため、音楽制作の英語に慣れていれば追いやすい。自動翻訳も併用できる。

このチャンネルでは、言葉をすべて聞き取れなくても図が助けてくれる。Ableton Liveのグリッド、強弱を色分けした図、16小節のブロック、手描きのプラスとマイナス。さらに音を足す前と後を必ず聴き比べるので、「いま何を変えたか」が視覚と耳の両方に残る。専門用語で止まったら、まず図と音だけを追い、二周目に字幕を読む見方がおすすめだ。

チャンネルの雰囲気

教室のホワイトボードを、そのままYouTube向けに楽しく編集したような空気がある。Oscarはカメラへ大きく身振りを付け、突然踊り、声で「boom」「tss」とビートを再現する。一方、説明の骨組みは驚くほど整理されている。

まず完成例を聴かせ、問題を一文で定義する。次に図を描き、Ableton Liveやドラムマシンで試し、最後は「自分の曲ならどう使うか」へ戻す。機能紹介から始めないため、画面上で使うのがAbleton Liveでも、学ぶ内容は別のDAWやハードウェアへ移しやすい。

特徴的なのは、クラシックな音楽理論の言葉を絶対視しないことだ。たとえばリズムを説明するとき、Oscarはキックで頭が下がる場所を「down」、その間を「up」、さらに間の細かな場所を「weak sixteenths」と呼ぶ。厳密な用語集を暗記するより、頭がどこでうなずき、足がどこへ引かれるかを優先する。

だから内容が初心者向けでも浅くならない。シンコペーション、ポリメーター、コール&レスポンス、ダイナミックレンジといった概念が、最後には「どう踊ってほしいか」「何を待たせ、どこで返すか」という作曲の判断へ結び付く。

グルーヴと構造を「見える形」にする

Underdogの教え方を最もよく表すのが、シンコペーションの図解だ。

四つ打ちでは、キックが鳴る場所が最も強い。キックの間にあるハイハットの場所が次に強い。その間の16分音符は弱い。すでに強い場所へ音を重ねると、重さは増えても新しいリズムの情報は増えにくい。反対に、弱い場所をアクセントで持ち上げると、まっすぐな脈拍へ横向きの力が加わる。これをOscarは「groovy tension」として、図、酸味のあるシンセ、身体の動きで順番に見せる。

ただし、弱拍へ何でも置けばよいわけではない。シンコペーションが強すぎれば、聴き手は頭をどこで振ればよいか分からなくなる。複数の楽器が同じ弱拍を支え、一曲全体では一つの大きなグルーヴとして感じられることが大切だと説明する。複雑さより、身体が迷わないことを基準にするのがUnderdogらしい。

時間軸を広げると、同じ考え方がアレンジになる。Oscarは五分のテクノを、10個の16小節ブロックとして紙に描く。一つの良いループを10回並べるだけでは、音は良くても物語は動かない。そこでハイパーカッションの「ギア」を変え、ブレイクとターンアラウンドを置き、リバース音で次を予告し、コール&レスポンスを足し、あえて最小限まで引く場所を作る。

目標は新しいアイデアを次々に出すことではない。中心のグルーヴを保ちながら、濃い/薄い、近い/遠い、満ちる/空になるという対比を作ることだ。Underdogの言葉に置き換えれば、アレンジとは「同じメッセージが、時間の中でどう変化するか」を設計する作業になる。

注目の動画

「The ten rules of techno」(約240万再生)

チャンネル最大のヒット作。脈拍、シンコペーション、キック、低域、Roland TR-909、アシッド、ポリメーター、満ち引きを、音楽と語りが一体になった約5分のパフォーマンスへまとめる。

講義なのに曲として聴けて、曲なのに制作原理が頭へ残る。最後は「テクノは軽くも、深く精神的にもなれる」と宇宙規模まで話が広がる。Underdogのユーモアと教育設計を最短で知る一本だ。

「Music Theory for Techno」(約146万再生)

「テクノに音楽理論は必要か」を、クラシック理論の当てはめだけで終わらせず、反復と不協和がジャンルの中でどんな役割を持つかから考える代表作。

テクノは和音が少ないから理論がない、という見方をほどき、少ない材料の関係と変化を聴く方向へ導く。鍵盤中心の理論動画でつまずいた人にも入りやすい。

「Syncopation - the key to groovy rhythms」(約25万再生)

強拍、裏拍、弱い16分音符を階層として描き、弱い場所を持ち上げると、なぜグルーヴが生まれるのかを説明する。この記事の代表動画に選んだ一本だ。

単独の音ではなく「時間上の場所」に強弱があること、複数の楽器で一貫したアクセントを作ること、最後は実際に踊って確かめることまで進む。Underdogの視覚化が最も分かりやすく表れている。

「6 key concepts for arranging techno」(約12万再生)

良いループを、10個の16小節ブロックからなる約五分の曲へ展開する長尺講座。ハイパーカッションの交代、ブレイクとターンアラウンド、マーカーとリバース、コール&レスポンス、引き算、演奏による変化を一枚の地図へ書き込む。

重要なのは、DAWへ向かう前に紙へ描くこと。サウンドデザイナーの手をいったん止め、作曲家として濃淡を考える。8小節ループから抜けられない人にとって、具体的な作戦表になる。

「Start from silence: a method for intentional drum programming」(約3.8万再生)

2026年公開の初心者向けドラム講座。最初の助言は、音を足すことではなく、いったん全部消して沈黙へ戻すことだ。そこから脈拍を一つ置き、音を足すたびに止まり、身体がどう動くかを確かめる。

ドラムマシンと3段階の強弱図を使い、脈拍、シンコペーション、リズムの小さなセル、コール&レスポンスへ進む。「減らす、余白を残す、聴く、感じる、踊る」というUnderdogの基準が、入門者向けに凝縮されている。

YouTubeの外にも続く学校

YouTubeでは一つの問いを一本で解くが、公式のオンラインコースは順番に学ぶことを重視する。「Foundations of Electronic Music」は、経験ゼロから曲を完成させるための土台をAbleton Liveで学ぶコース。「Triangle Method」は、音源、シーケンス、エフェクトを組み合わせ、選択肢に溺れず探究を続ける反復可能な方法を教える。

ブリュッセルの教室では、長期コース、ワークショップ、交流イベントに加え、2026年には一週間のテクノ集中講座も開催された。動画で図になった知識が、教室では受講者の曲、フィードバック、共同のジャムへ戻る。PatreonとDiscordは、無料動画を支えながら地理を越えて参加できる接点になっている。

Oscar自身のTorc名義の音源や「The ten rules of techno」の編集版はBandcampでも聴ける。教えた内容を作品で試し、作品から次の教材を作る循環が、学校全体に流れている。

チャンネルの歩き方

完全な初心者なら、「Start from silence」から始める。次に「Synthesis for beginners」で音色の基本を学び、「Music Theory for Techno」へ進むと、リズム、音色、音楽理論の土台がつながる。

グルーヴを改善したいなら、「Syncopation」から「4 steps to make funky hihats」へ。続けて「How to keep your boring loop endlessly spicy with Polymeters」を見ると、まっすぐな脈拍へ、異なる周期とアクセントを重ねる方法が見えてくる。

ループから曲へ進みたいなら、「The way out of the 8-bar loop」で緊張と解放の最小単位を作り、その後に「6 key concepts for arranging techno」で曲全体の地図を描く。同じ問題を、局所と全体の二つの縮尺で学べる。

まず楽しさを知りたいなら、「The ten rules of techno」へ。気に入ったら、曲の構造を分解する動画、Eurorackのライブセット、Roland TR-909やアシッドを扱う実演へ寄り道していけばいい。

関連チャンネル

  • Venus Theory — 音色の意図と「なぜ作るか」を掘り下げる。Underdogで構造を見た後、その選択が描く景色まで考えたい人に
  • You Suck at Producing — Ableton Liveの具体操作を乾いたユーモアで教える。原理を図で学ぶUnderdogと見比べると理解が立体的になる
  • In The Mix — ミックス、シンセ、音響の基礎を体系的に整理。グルーヴと構成を作った後の仕上げを固められる
  • Andrew Huang — 制約、サンプル、楽器を実験へ変える音楽クリエイター。学んだ原理から新しい遊び方を探したい人に
  • mylar melodies — テクノの構造を、即興できるモジュラー・ライブのシステムへ変える実践家
  • Ricky Tinez — ハウスや電子音楽のグルーヴを、ドラムマシンとシンセで手触りのあるジャムへ変える

まとめ

Underdog Electronic Music Schoolは、電子音楽をプリセットや手順の集まりとして教えない。キックの場所に脈拍があり、その間に弱い時間があり、弱い場所へ力を加えると身体が動く。一小節に起きたことを、16小節、五分、一つの作品へ広げていく。

「センス」で片付けられがちなグルーヴを図にし、「展開が思い付かない」という行き詰まりを地図にする。それでも最後の判断は、耳で聴き、身体を動かすところへ戻す。テクノやハウスを作りながら、何をしているのか自分の言葉で理解したい人に刺さるチャンネルだ。